どうしてGA4は使いにくいの?
サイトを良くしたい企業・ウェブ担当者とGoogleの狙いのずれを乗り越えて
05だからGA4は「月次」の考え方を持っていない
旧UAは、非常に多くの項目で月次のデータを取得することができました。それも、過去にさかのぼって何年分も、月次のデータを得られました。
図1
図1はUAで、「集客 > すべてのトラフィック > チャネル」で、折れ線グラフを「セッション」(訪問数の延べ人数のことです)にし、総セッション数と自然検索、直接アクセスでの訪問数をグラフに表示した状態です。期間もぐっと長く、2020/01/01-2022/10/31と2年10ヶ月にし、右に見える「月」というボタンを押すことで「この期間の月次のグラフ」にしています。
この状態でデータをエクスポートすると、図2のように、総訪問数、自然検索訪問数、直接アクセス訪問数の月次データを得ることができます。
図2
これを使ってエクセルで処理すれば、「総数に占める自然検索での訪問割合がこの2年10ヶ月でどう変わってきたか」「リピーターを多く含むと思われる直接アクセスが増えてきたか」といったことが簡単に集計できました。
このように、月でデータを再集計する機能がGA4には今のところありません。
GA4はカレンダー自体が「月」に対応していない
図3
もう1つ図を見てみましょう。図3は、UAのカレンダーです。このカレンダーは日付がリンクになっていて、分析したい期間の最初と最後の日付をクリックするだけで期間指定ができるとても便利なものです。
しかも、「2022年9月」といった年月表示の文字も青くリンクになっています。これをクリックすると、ワンタッチで9月1日から30日までの1ヶ月間を指定することができました。
図4
一方、GA4のカレンダーは図4のような形になっています。年月表示はクリックできなくなりました。左側に用意されている選択肢は
- 今日
昨日
今週(日曜日~本日、月曜日~本日、土曜日~本日)
先週(日曜日~本日、月曜日~本日、土曜日~本日)
過去7日間
過去28日間
過去30日間
過去90日間
過去12ヶ月間
昨年
今年(1月~今日)
となっています。ほとんどが、日次や週次でサイトを運用している「施策頻度の高いサイト」用の項目です。Googleの国には31日ある月がないのでしょうか? 1ヶ月のユーザー数が知りたいとして、今日が11月22日であるとすれば、過去30日間を選ぶと、10月23日~11月21日の集計になります。そんな中途半端な期間を誰が見たいのでしょうか。
実際には「そんな中途半端な期間を見たい」人があるのです。それは広告を運用している人です。広告は毎日コストがかかるので、日次・週次で管理し、問題があればいち早く改善しなければ無駄コストが積もってしまいます。中途半端な期間であっても、「過去30日間のパフォーマンスはどうだった?」を調べることに意味があります。
しかし、広告を出さず、「制作会社に毎月5万円で保守をお願いしている」「広告代理店に毎月30万円の予算で広告出稿をお願いしている」くらいの運用規模の会社であれば、月次でパフォーマンス管理するのが一般的ではないでしょうか。
GA4では「このデータの変遷を見たい」と、長い期間を指定して、全部の月次データを一度に取ることができません。変遷が見たい場合は、過去にさかのぼって、カレンダーから1ヶ月ずつ、1日と最終日をクリックして指定し、何度も何度も数字を取っていくしかありません。
GA4に切り替えたウェブ担当者は毎月毎月、基本的なデータを取得してエクセルに蓄えていくしかありません。
データの保持期間についてご注意!
GA4では「設定」の「データ設定 > データ保持」の画面に「イベントデータの保持」というプルダウンメニューがあって、初期状態では「2ヶ月」、これを切り替えれば「14ヶ月」が選べる、という二者択一のプルダウンメニューがあります。
これを見て、「とりあえず長い期間にしたけど、14ヶ月を過ぎたらデータが消えて見られなくなってしまうのか?」と思われた方もあるようです。これはひとまず違います。
この期間が適用されるのは探索レポートだけで、標準のレポートには適用されません。理屈上は標準の「レポート」という項目を見ることはできるので、ひとまず安心できますね。
Google自身の説明によると、
Cookie やユーザー ID、広告 ID に関連付けて送ったデータの保持期間は変更できます。この設定の内容は、ほとんどの標準的なレポート(集計データに基づくレポート)には影響しません。
となっています。確かに、個人情報に類するデータや広告に紐づいたデータは、2ヶ月しか保持されなくてもそれほど問題ではありませんね。広告でがんがんサイトを運営している人は3ヶ月前を振り返っている暇はなく、短期間に改善を繰り返して最新のデータと取っ組み合いをするのが当然です。
一般的な企業サイトでは、長期的なデータの増減のトレンドを見ていくことが大切です。月次の変遷データをエクセルに取り出して、折れ線グラフにし、そこに近似直線を表示し、その式を表示します。そのやり方については次の項目「それでも企業は月次でサイトを分析しなければならない」で見ていくことにしましょう。
ひとまずGA4が、月次でのデータ管理にあまり向いていないつくりで、月次で管理する会社は基本的なデータを毎月取得してエクセル上で蓄積していく必要があると踏まえておきましょう。