どうしてGA4は使いにくいの?
サイトを良くしたい企業・ウェブ担当者とGoogleの狙いのずれを乗り越えて
06それでも企業は月次でサイトを分析しなければならない
GA4は「広告でがんがん集客して」「その人たちが好きになって(エンゲージ)くれれば」「やがて商品を買ってくれる(収益化)ので」「そのお客様を維持して(維持率)VIP客に育てましょう」と考えています。このサイクルこそがマーケティングなんだよ、と言っているようです。
しかし、これはGA4が攻めすぎていると言わなければいけません。大半の企業サイトはECサイトではありません。ウェブで収益化できるわけがないし、その維持率というのも意味を持たないものです。
私たちはサイトを改善して、お問い合わせや採用エントリーなどのコンバージョンを増やすのが仕事です。実際の収益化はそこから営業(や人事)が動いて実現しています。いわばホームページはリード獲得のツールです。
日本ではかなり多くがB2B企業であり、B2Cであっても店舗集客型のビジネスも多く、ECをやっている会社はむしろ少数派です。そのため、GA4は多くの企業ウェブ担当者にとって使いにくいものとなっています。
左ナビで分かるUAとGA4の考え方の違い
Googleのマーケティングの考え方は左ナビゲーションを見れば分かります。
従来のGoogleアナリティクス(UA)では左ナビゲーションが
- ユーザー(どんな人を何人)
- 集客(どの媒体から集めたか)
- 行動(見たページなど、サイト内の動き)
- コンバージョン(どれだけお問い合わせなどのゴールがあったか)
となっていました。「ユーザー」と「集客」はどんな人を何人、どの媒体から集めたか、ということですから、集客についての細分と考えれば良いでしょう。
ホームページが効果を出すためには次の3つのステップが必ず必要です。
1)集客:顧客になりやすい人をサイトに招く
2)説得:重要なページを見せて訪問者を説得する
3)目標:お問い合わせなどのゴールにいざなう
UAの左ナビゲーションは、「ユーザー」「集客」が「1)集客」にあたり、「行動」が「2)説得」についてのデータを見ることになり、「コンバージョン」が「3)目標」に該当しました。ウエブマーケティングの流れを自然に再現していたわけです。
だからUAでは上から順番に項目を見ていくだけで、「集客」→「説得」→「目標」がうまくいっているか、どこでうまくいっていないかを理解することができたのです。
一方、GA4では、まず大項目が
- ホーム
- レポート
- 探索
- 広告
となっています(ほかに「設定」というのもありますが省いています)。本来、「広告」はレポートの中に入っているべき項目なのに、わざわざ取り出して強調しています。それだけGoogleは広告を出してほしいのでしょう。
一方、レポートの中はどうなっているかと言えば、
- ●レポートのスナップショット(目次のようなもの)
●リアルタイム(直近のデータによるレポート)
が最初にあって、続いて
- ユーザー
●ユーザー属性(地域など)
●テクノロジー(OSやブラウザ)
ライフサイクル
●集客
●エンゲージメント
●収益化
●維持率
と並んでいます。
ユーザーと集客は、どんな人をどのチャネルから集めているか、ということなので、「ユーザー」と「ライフサイクル」と項を分けていますが、一連のものです。
すると、残りの項目で、「エンゲージメント」が「2)説得」のデータを見る箇所となり、「収益化」「維持率」が「3)目標」だということになります。
この「集客して」「その人たちに好きになってもらって(エンゲージメント)」「その人たちが商品を買ってくれる(収益化)ので」「その人たちを維持してVIPに育てる」という流れのことを、GA4は「ライフサイクル」と呼んでいます。
説得にあたる「エンゲージメント」の中はどうなっているか
私たちがウェブを運営していて、サイトを改善するためにデータを見ましょう、という場合、重要な項目の大半は「エンゲージメント」の中に入っています。
そこでさらにエンゲージメントの中の項目を見てみましょう。
- エンゲージメント
・エンゲージメントの概要
・イベント
・コンバージョン
・ページとスクリーン
・ランディング ページ
となっています。従来のUAでは「コンバージョン」として独立していたものが、エンゲージメントの中の1つの小項目になってしまっています。企業ウェブサイトにとって一番大切なお問い合わせや採用エントリーを分析する項目がこんなところに入っている。GA4にとっては「収益化」が本来のゴールであって、お問い合わせなどのコンバージョンは「中間ゴール」でしかないのですね。
しかも順番があべこべです。普通なら
- ・ランディング ページ:どのページでの集客が効果的か?
・ページとスクリーン:どのページで訪問者が説得されているか?
・コンバージョン:どれだけの人がゴールに進んだか?
という順序で見ていくから、どこまでうまくいっていて、どこでつまづいているか理解できるのですね。
さらにいえば、初期状態ので「イベント」はほとんど意味のない項目です。エンゲージメント(好きになってくれている)状態を計測するのにイベントが重要と考えているので、イベントをエンゲージメントの先頭に出しているのでしょうが、スクロール(ページの高さの90%までスクロールしたこと)やページビューが混在するイベントは、多くの会社にとって解釈の難しいものです。(実際には、イベントをきちんとチューニングしていけば良いレポートになるのですが、そんなイベント設定ができている会社はほとんどありません)
月次でデータをとって蓄積しなければなりません
私たちの多くは日本の、普通の会社でウェブを担当しています。ということはECではないし、広告をがんがん出稿して集客するのでもありません。毎日のように新情報を掲載して、それを見にたくさんの人がやってくる、というサイトも少数派です。
EC、広告、そして毎日更新といったスピードが大切なサイトであれば、解析も日次、週次で行わなければなりません。広告を出している会社が月次で分析して、改善結果が出るのは2ヶ月先、といったのんびりしたサイクルで運営していたのでは、広告費の損が大きくなります。毎日データを見て、広告を最適化しないともったいないのです。
しかし年に1回新製品が出る、年に1回展示会に出展する、といった一般の会社にとって、毎日データを見ても変化はありません。
どんな風にホームページが動いているか、については月次でとらえて、それを蓄積して成長を感じられるようにする、というのが大切です。
従来のUAでは、カレンダーを操作して長い期間のデータを取り、それを月次でグラフ化してからデータをダウンロードすることで、簡単に月次のデータを取得することができました。全体の訪問数が何月に何人だったか、検索から何人来たか、スマホは何人か。お問い合わせをしたのが何人か。すべて簡単に月次のデータ取得が可能でした。
GA4でも同じように、月次でのデータ取得を続けていかなければなりません。
ところが、GA4のカレンダーには「長期間を指定して月次でデータを集計する」という機能がなくなってしまいました。基本的には月次のデータは毎月毎月取得して、それをエクセル上に収集していかなければならないのです。私たちウェブ担当者にとって、GA4が一番面倒なのはここかもしれません。
毎月第2木曜日にウェブの報告会を行うと決まっている会社があります。一番短い月には8日が第2木曜日になるので、最初の1週間で必要なデータを全部とってエクセルに入れ、そこからグラフ化したり、パワーポイントでプレゼンをつくって、社内報告会に臨まなければなりません。これはウェブ担当者にとって大きな負担となってきました。
旧UAであれば、あとからさかのぼって「このデータは月次で見るとどうなっていただろう」と取得できますが、GA4ではカレンダーを何度も操作して、「はい、1月のデータがとれたから、次はカレンダーで2月を指定して、データをとって、はい、次は3月…」とやらなければなりません。
では次の回から、いよいよ実際にGA4でどういう風にデータをとっていけば良いかを見ていくようにしましょう。