どうしてGA4は使いにくいの?
サイトを良くしたい企業・ウェブ担当者とGoogleの狙いのずれを乗り越えて
04GA4が対象とするのは広告でがんがん集客する会社
旧Googleアナリティクス(UAと呼ばれます)では、左ナビゲーションが
- リアルタイム
- ユーザー
- 集客
- 行動
- コンバージョン
となっていました。主人公はアナリティクスを使っているウェブサイトで、その現状を明らかにしようという考え方で、「どんな人か」(ユーザー)、「どう集めたか」(集客)、「どう見たか」(行動)、「目標にどれだけ到達したか」(コンバージョン)と順序良く並んでいました。
私は企業がサイトを改善するためには、「集客」→「説得」→「目標」というステップが不可欠だと考えています。「ユーザー」と「集客」が私の思う「集客」に該当し、「行動」が「説得」、「コンバージョン」が「目標」に該当すると思います。UAの項目は、この順番で見ていけばサイトの改善を行うことができるものだったわけです。
ところがGA4からこの順序良さが消えてしまいました。GA4のナビゲーションは
- レポート
- 探索
- 広告
です。何だか分からなくなりましたね。「レポート」が一般的な項目をクリックして見ることができるものだとすると、その中が整理されているべきです。その項目を見ると、
- ユーザー
- ユーザー属性
- テクノロジー
- ライフサイクル
- 集客
- エンゲージメント
- 収益化
- 維持率
となりました。最初の「ユーザー」がUAの「ユーザー」に相当します(項目数は大幅に減りましたが)。次の「ライフサイクル」という言葉が気になりますね。UAとの対応関係を見ておくと、UAの「集客」がGA4でも「集客」となっており、UAの「行動」がGA4で「エンゲージメント」に、UAの「コンバージョン」がGA4で「収益化」にあたる、と考えるのが普通です。
ところが、GA4の「収益化」は、一般的な企業サイトのお問い合わせや採用エントリーなどの目標を扱うものではありません。
無意味な項目が多すぎる!
「収益化」の内部項目を見ると、
- 収益化の概要
- eコマース購入数
- アプリ内購入
- パブリッシャー広告
で、ネット販売やアプリでの販売を行っていない会社のサイトではこの「収益化」内部が全部ゼロにしかなりません。多くの会社にとって無意味な項目です。
その分、「エンゲージメント」の中に
- エンゲージメントの概要
- イベント
- コンバージョン
- ページとスクリーン
があり、UA時代には最後の確認項目であったはずの「コンバージョン」がこんな場所にごっちゃに置かれてしまいました。
こうした順序の悪さと無意味項目は、企業サイトの運営者にとってとても使いにくいものとなっています。
最後の「維持率」という言葉はGA4で新たに登場したような言葉で、Google自身のヘルプによれば、
維持率トピックでは、ユーザーがウェブサイトかモバイルアプリを最初に訪問した後に、エンゲージメントを行った頻度と期間を確認できます。また、初回訪問後に新たに発生した収益に基づいて、ユーザーの価値を判断することもできます。
と書かれています。これもまたほとんど一般企業サイトには関係のない話です。大半の企業サイトではかなり長期間をとっても
1ユーザーあたりの訪問数 1.1~1.2
です。1人の人が二度三度と同じサイトを訪れることはほとんどないのが実情です。多くの企業サイトでは1回か、多くても2回しか訪れないユーザーを説得して、お問い合わせしてもらおうとしているのです。実に難しいことをやっているのですね。
ところがGoogleは、多くのサイトがECサイトで、同じユーザーが何度も訪れ、そのうちに商品を気に入って購入に至り、その後も何度も購入するのだ、と考えています。
世の解説サイトの中には、Googleの言うことは正しいのだと思って、
「積極的なユーザーを獲得するためには新規ユーザーを増やす施策に加えて、ユーザーの定着率を上げることも重要です。
なぜなら新規ユーザーよりもリピーターの方がコンバージョンに繋がりやすいからです。」
などと言っていますが、これはまったく仮想の話です。リピーターという集団が先にあって、それがコンバージョンに至るのではありません。新規訪問時に気に入ってくれた人が、「今日はお問い合わせをしよう」と、コンバージョンするときにリピートしてくれるだけなのです。
もちろん、すべてのウェブサイトでリピーターを獲得することのメリットはありますが、大半が会社のファンをつくり、信頼感を醸成し、ブランドチェンジを防ぐというメリットであって、「通っているうちに購入してくれた」「何度も繰り返し購入してくれた」という意味でのリピーターは存在しません。
何しろお問い合わせや採用エントリーなどの企業サイトの目標は、何度も繰り返し実行するものではないのです。一度お問い合わせをした人が再度お問い合わせするのは、会社の対応がよほど悪い場合だけでしょう。
もともとの「ライフサイクル」は、ECサイトにおける「LTV」(ライフタイムバリュー、顧客の生涯価値(購入額))のことを指していると考えるほかありません。その上で「収益化」「維持率」が中に含まれているのです。
GA4が使いにくいのは、一般的な企業サイトにとって、使いようがない無意味項目が多すぎるためです。「他に見たい項目がある人は、探索で自分でつくってください」とGoogleは言うのでしょうね。UAの頃に順序良く並んでいた、「ユーザー」「集客」「行動」「コンバージョン」がばらばらになり、企業サイトがどうサイトを改善するかという考え方が消えてしまったのは残念なことです。
広告だけが独立している
左ナビの大項目として、「レポート」「探索」のあとに「広告」が独立したのも妙です。普通に言えば、
レポート
集客
ユーザー獲得
トラフィック獲得
などの項目の中で広告のパフォーマンスをチェックできるはずです。もちろん、この項目の中にもリスティングやバナー広告が出てくる画面は用意されているのですが、それとは別に「広告」が出てきました。
これはGoogleがそれだけ広告を出してほしいと考えていることの現れだと言えます。広告が多くの顧客との接点をつくるのは間違いありません。ECではない多くの会社にとっても、広告は意味のあるものになるでしょう。
しかし、大半の会社にとって、大量の広告を出すには顧客の数が限られています。日本全国、全ての日本在住者を対象に商売をしている会社ははっきり言ってごくひと握りです。B2Cサイトの多くが対象エリアが限定されていて、B2Bサイトの大半が対象産業が絞り込まれています。だからあまり多くの広告を出すことはありえません。
Googleは広告媒体でもあるので、広告を出してほしいのはやまやまでしょうが、初めから「Google広告」の管理画面の中で分析機能を提供すれば良いのであって、広告を出さない企業にまで広告を出さないと使える項目が半減するようなアクセス解析ツールを提供するのは、押し売りだと言わなければなりません。だから非常に多くの企業にとって、GA4は使いにくいツールになってしまったのです。