通販・eコマース
普通の商売が普通にやっていることがECシステムではなぜできないのでしょう?
多くの商品を検索や並べ替えができるように表示し、カートに入れて楽に買い物ができるようにする。ネットにおける通販・e-コマースの姿です。
しかし、データベースに頼りすぎた通販は成功しません。売りたい商品を見えやすいところに展示する。大きく扱う。商売にとって当たり前のことができないようなシステム開発はやめてしまった方が良いと思います。紙の通販カタログで全部の商品を同じ大きさに扱う人など1人もいません。
ある家電製品のECサイトでは、「洗濯機」というキーワードで1位になりました。ところがGoogleに紹介されていたのはある洗濯機1アイテムのページ。その結果、洗濯機を探す人が多くサイトを訪れ、その洗濯機だけを見て帰っていきました。
いわゆる家電店でそんなおかしなことがあるでしょうか。洗濯機がほしいと思って訪れ、さまざまなメーカーのさまざまな価格帯の商品を見比べて選ぶ。お店の側はより儲けの大きい洗濯機や早く売ってしまいたい商品が売れるように誘導する。このせめぎあいが商売です。訪れた人は洗濯機を買いたかったけれども、レジの近くで「あ、あそこの電球が切れていたから買っておかなければ」「電池もついでに買っておこう」「あれ、美味しい水が安くで売っている。どうせ車で来ているのだから買っていこう」。こうした行動で家電店は儲かっているのです。
こうした普通の商売を行うには、お店には可変性が求められます。
売りたいものを売る。顧客が目にするようにする。ヨドバシカメラの棚にはすべてキャスターがついていて、棚の配置をひと晩で入れ替えられるというのは有名な話です。
ところがECサイトは一度作ったシステムを変えることができず、みすみす勝機を逃しているのです。わたしたちも、これまで多くのECサイトを制作し、システム開発してきましたから、無責任ではいられません。なんとかしなければ多くの通販ビジネスが失敗に終わってしまいます。
パン屋さんの布陣に学ぶ商売の流れ
普通の商売と言うと、パン屋さんを思い出します。パン屋さんは入口付近にワゴンがあって、美味しそうな菓子パンがちょっと安くなっています。動物パンがぜったい低い棚に展示されていて子どもの足を止めてしまいます。
足が止まってしまったらしょうがありません。「そうそう、食パンも買わなきゃ」と自分を納得させて店に入ると、多くの美味しそうな菓子パンやおかずパンの誘惑が待っています。それを耐えて食パンを探すとなぜか奥の方にあって店をきれいに一巡させる仕組みができています。「牛乳もついでに」コーナーを通ってレジにたどり着くと、最後にレジの横に「ラスク」が待ち構えている、という布陣です。
これは鉄壁の布陣です。ベルギーの3点目に匹敵する見事な速攻です。すべての通販サイトはこうした鉄壁の布陣を敷くことができているか、今すぐ点検しましょう。
通販が踏まえなければならない3本の矢
ネットであるかどうかにかかわらず、すべての通販が考えなければいけないのは次の3つの矢印です。
動物パンで足を止めて初回購入者を増やし、レジ横にラスクを置いて単価を引き上げ、スタンプカードで購入頻度を向上させるパン屋さんは見事に3本の矢を育てています。
通販サイトが見習うべき施策です。
多くの通販サイトは、「今持っている商品を売る」という形で作られているために、商品の布陣ができていません。どの商品が「初回購入商品」として位置づけられるのか? どの商品が「ついで買い商品」として位置づけられるのか。整理が必要なお店がとても多くなっています。
特に重要なのは2回目の購入を促す施策です。常連化させるための施策。かつ、常連になった人にさらに買わせるための施策です。
多くの通販サイトは会員登録して購入する仕組みになっていますが、登録したから2回目の購入をするかどうか。それは必要条件ではあるが、十分ではありません。
商品だけではなく、同梱やメール、お誕生日カードまでを駆使してこれを行わなければなりません。そこに知見があります。顧客データの分析も必要となるでしょう。当社の主任研究員・石井研二は紙のカタログの時代から知見を積み上げてきました。顧客データとあわせたe-コマースの分析を行っています。ぜひご相談ください。