ウェブの仕事で一番大切なのは
「文章を書くこと」
日頃、ウェブの相談を受ける中で、一番おかしいと思っていることは、次のようなことです。
・多くのウェブ担当者が「SEO対策をしたい」と言う
・にもかかわらず、ウェブの原稿を書くということはしない
SEO対策、というのはウェブの内容そのものによって行うものです。ところが、企業のウェブ担当者をはじめとする企業人は、ウェブの原稿を書きません。その結果、ウェブに出てきもしない「キーワード」で検索結果の上位になる、というほとんど不可能な対策を考えることになります。
このシリーズではウェブで文章を書くことについて考え方をお話し、徐々に具体的な作文術を解説していきます。ウェブの文章は難しくありません。ぜひ自前でウェブページの原稿を増やしてください。
ウェブの原稿を書くことを常識にしましょう
ウェブは、いつでも内容変更できるという他にはない特長を持った媒体です。しかも何ページでも増やすことができます。
印刷物ではこれは無理です。内容を増やそうと思ったら丸ごと刷り直し、配布だってやり直しになります。SNSでも、一度発信してしまったらその時点で確定です。削除や内容変更ができないわけではありませんが、読者の手元にスクリーンショットとして残されてしまったら、それがずっと出回ってしまう可能性もあるのです。
商品についてのページも、「この商品を特に売りたい」と考えている商品であっても、実にそっけないものです。ちょこっとパンフに載っている説明文と、あとはスペックがあるだけ。
もったいないです。これでは検索から人が来るはずがないし、サイトを訪れた人がこの商品を「ほしい」とは思いません。
たとえば、高級なベッドマットがあるとしましょう。たぶん値段は20万円くらいします。その分、素晴らしい特長を備えていて、
1)深い眠りが約束される
2)腰痛を軽減してくれる
3)寝汗がすぐに乾いて、干す手間がかからない
4)寿命が長く、結局安い
という商品です。こうした商品について、多くのサイトでは1ページだけ使って紹介し、「4つの特長」といった箇条書きで済ませてしまっています。
しかし、それでは売れません。なぜなら、特長ごとに顧客ターゲットが異なるからです。
1)眠りの質を改善したい人
2)腰痛に悩む人
3)寝具の手入れに悩む人
4)費用を抑えたい人
などがそれぞれのターゲットだと考えられます。ところがこの商品ページには「腰痛」について書かれている部分が非常に少ないので、「腰痛に悩む人」がこのサイトを訪れる可能性がほとんどありません。他の特長についても同様です。
ほとんどすべての商品が、「ターゲットが異なる複数の特長」を持っています。各ターゲットに向かって直接話しかける必要があります。SEOやコンテンツマーケティングという名前が広まり、そのノウハウを教えるセミナーが山のようにありますが、一番肝心なのは
そのターゲット専用で話しかけること
です。その人が求めている内容がサイトにあるから、その人は訪れるのです。なければ来ない。簡単なことです。複数の特長を1ページに箇条書きしている限り、どの特長のターゲット顧客も、サイトを訪れません。
にもかかわらず、「『快眠』『安眠』というキーワードでSEO対策をしたい」と言っています。外部からリンクをはればサイトに書かれていもいないキーワードで順位が上がる、というのはSEO業者の宣伝に過ぎません。仮に順位が上がっても、それで検索から訪れた人はみんながっかりして帰ってしまうでしょう。自分にとって必要な情報がほんの少ししか書かれていないのですから、しょうがありません。
この大きなギャップを埋めるには、自前でウェブページの原稿をつくる他ありません。ウェブというのは、社員みんなで原稿を書く仕事なのだ、ということを常識にしてください。
ウェブが成功するための根本的な方法は、
・商品の特長を考える
・それぞれの特長を評価するターゲットを考える
・各ターゲットに向かってどんどん話しかける
ということです。
これを実現するには、「どんどん話しかける」。つまり原稿を書くのです。
●ウェブに上手な文章なんて必要ありません
ウェブ担当者は大半が「自分には文章力がない」と口にしますが、よく聞いてみると、
・文章が上手ではない
・忙しくて書く時間がない
・内容に責任が取れないので書きたくない
・ウェブで文章が必要だという認識がない
こういったところです。
上手な文章なんて必要ありません。だいたい、ニュースサイトやポータルサイトを見ているとプロが書いたページがたくさん出てきますが、上手だなと思うことなんてめったにないですね。
それで良いのです。ウェブは伝わることが一番です。太宰治に、
雨が降ってきた。薄荷の糸のように。
という一節があります。素晴らしい。が、こんな上手な比喩は企業ウェブに必要ありません。端的に、単刀直入で良いのです。
B2Bサイトではたまに、戦国大名のエピソードになぞらえてビジネスの教えを説く文章があります。おじさんたちは戦国時代が大好きですからね。私が解析したサイトでも、織田信長ファンばかり訪れていたサイトがありました。それでは商品は売れません。
書籍などの長文の文章では、「起承転結」で長い時間をかけて読んでもらい、最後にクライマックスを持ってくる、ということができるでしょう。でも、企業ウェブではそんなにゆっくり読んでくれません。
3秒から10秒です。その間に読者の気持ちをつかまなければいけません。「起承転結」は不可能ですね。音楽で言う「サビあたま」というやつで、一番大切なことを最初に言う必要があるのです。
逆に、サビあたまの文章であれば、文章力は必要ないし、書くのに時間もかかりません。必要なのは「ターゲットに直接話しかけなければ、誰も来ないし、問合せもない」と考えて、原稿を書くことの優先順位を高めることです。
では次回から、ウェブの原稿のパーツについてご説明していくことにしましょう。