ホームページを自分で(自社内で)制作するために必要な考え方

このシリーズでは、最終的に自分でホームページ制作ができるようにする、ということを目指してお話を進めていきます。

ホームページを作成する、というと、専門的な知識がたくさん必要で、専門家に頼むと高い費用がかかる、というイメージが先行すると思います。企業側のウェブ担当者はそうした専門的な知識があまりないのが普通です。

●ホームページの価値観の問題

多くの会社で、ホームページは「持っているけれどもそこからお問い合わせがほとんど来ない」「たまに来ても業者からの売り込みばかり」といった状態です。とてものことに「ホームページから新規の契約がとれる」という形になっていません。

ということは、ホームページは売上価値はゼロ円ということになります。

売上につながらないものであれば、普段の運営にはゼロ円しかかけられないというのが自然ですね。だから専任の担当者を置く予算もそもそも出てきません。担当者は他の仕事と兼務となります。他の仕事だけで十分に忙しいのに、その上にホームページも担当せよ、ということです。

これでは担当者はホームページの知識を集められるはずもないし、いつしか放置ということになるのが当然です。3年から5年たてばさすがにデザインなどが古めかしくなるので、そのたびにリニューアルをしよう、制作業者を呼んで見積りをとろう、ということになります。

1年目 リニューアル予算100万円 売上ゼロ円
2年目 運用費ゼロ円 売上ゼロ円
3年目 運用費ゼロ円 売上ゼロ円
4年目 運用費ゼロ円 売上ゼロ円
5年目 運用費ゼロ円 売上ゼロ円
6年目 リニューアル予算100万円 売上ゼロ円

このサイクルを繰り返しています。10年でリニューアル予算が2回なら費用は200万円、売上はゼロ円です。売上ゼロ円だから、この硬いチェーンの繰り返しから逃れることができません。

これが今の多くの、特に日本の大半を占めるB2Bの中小企業のホームページの現実ではないでしょうか。

●ホームページで売上が上がるとはどういうことか?

このホームページで売上が上がらなければいけないのです。ホームページで売上が上がるということは、たとえば次のようなことです。

ホームページの訪問者が月に5,000人来る

新規見込み客からのお問い合わせが月に25件入る(0.5%)

2ヶ月で50件の問い合わせのうち1件が契約に至る(2%)

これでこの1件あたりの契約価格がB2Bの会社なら100万円になるとすれば、2ヶ月に1件ですから、月の売上はならすと50万円ということです。

毎月50万円の売上を上げるホームページであれば、年間の売上は

50万円 × 12ヶ月 = 600万円

となります。2ヶ月に1件契約がとれるだけで、この売上高となります。もちろん、契約に至るためには営業部門の努力もありますから、ホームページだけの手柄ではありません。全部をホームページの売上とつけるわけにはいきません。それでも新規見込み客を連れてきたのがホームページだというのは確かですから、経営者の価値観は変わってくるでしょう。

多くの企業ウェブ担当者がこの話は夢物語だと思っています。でも、実際に成果を上げているホームページはあります。担当者や経営者が「自社のホームページで良いことが起こった経験がない」ために想像がつかないのは仕方がないのですが、上記の、

訪問者の0.5%が問い合わせをする
問い合わせの2%が契約に至る

というのは普通に良く見る数字です。価値観を調整する必要があるのです。経営者の価値観は、結果としてこの数字がついてこなければ変わりませんから、ウェブ担当者が先に考え方を変えて、実績を上げることを目指していきましょう。実績が上がれば経営者の考えはすぐに変わります。経営者はそこは柔軟で、やはり賢い方ばかりです。経営者がちょっと「あれ、あいつに任せていたら、なんだかホームページの効き目が出ているようだな」と感じるかどうかが、境目なのです。

毎年600万円の売上がホームページから上がる、というのは何億も売り上げている会社からすればまだまだ小さな数字かもしれません。しかし、経営者が「若い担当者をホームページ専任にしてもいいのではないか」と考えれば状況は変わってきます。

●ホームページの売上で忘れられている方法

今は新規見込み客からの問い合わせという話をしましたが、ホームページの売上はそれだけではありません。売上を上げるには次の2つの方法があります。

1)新規顧客から問い合わせが来て、営業し、契約に至る
2)既存顧客から連絡が来て、追加の注文が入る

この(2)の既存顧客向けの作戦が、実はホームページの得意とするところです。すでに機械を売った顧客から次の機械や消耗品の注文が入れば、企業は一番多く利益を出すことができます。

ホームページは実際には既存顧客のための道具にならなければなりません。新製品の情報を提供したり、機械の活用方法を教えたり、簡単に消耗品を注文できる仕組みを導入することが重要です。

ところが大半のホームページはその仕組みがありません。営業は既存顧客の維持に一生懸命走り回っているのにその活動を助けることをしていないのです。これは会社にとって大きな損です。

たとえば工場に納入した機械にシールを貼って、QRコードをつけておくだけで、工場の人はそれをタブレットのカメラにかざすだけで故障の連絡をすることもできます。消耗品を注文するのも簡単になるでしょう。

既存顧客にメールを送れば、新製品の情報を伝えることもできます。メールに書かれたアドレスをクリックすれば、パスワードの必要な「既存顧客専用サイト」に招くこともできます。そこで詳しい情報を伝え、機械の使い方マニュアルを調べられるようにし、ついでに消耗品を注文できるようにしておけばどうでしょう。

消耗品にしても、前回注文した履歴を保存しておいて、次に注文するのが楽になる仕組みも、ホームページが最も得意とするところです。

●ホームページを自分で制作するとは?

ホームページを自分で作成できるようにしましょう。それはホームページを記述する言語を覚える、ということではありません。

「新規見込み客をとるにはこうしよう」「既存客を囲い込んで追加発注をとるにはこうしよう」「優秀な学生を採用するにはこれが必要だ」と考えられるようになることが一番大切です。

ホームページを記述する言語を覚えても、プロ並みになることは普通はできません。プロは毎日そればかりやっていますから、かなうはずがありません。

一方、ホームページ制作会社は、ホームページ記述言語については知っていますが、御社が新規見込み客をとるとき、何が有効なのかを知りません。既存顧客とどういう関係を築けば良いかも知りません。就職希望者に何を言えばエントリーしてくれるか、も分かっていません。

それを考えることができるのは、制作会社ではなく、御社自身です。それが「ホームページを自分で制作する」ということなのです。

この話をすると大半の企業担当者が、「ホームページのことはまったく素人で、どう考えれば良いか分かりません」と答えます。これでは堂々巡りですね。専門家を呼んで見積りをとって、安い業者を選んで、成果の出ないリニューアルをする、また3年後…。この不毛なサイクルを脱出して、別の上昇サイクルに乗り換えていきましょう。

もし、これを読んでいる方が会社の経営者なら、社内のウェブ担当者を呼んでこの原稿を読んでもらってください。そして学習を始めてもらいましょう。

ご自身がウェブ担当者なら、さっそく準備を始めましょう。その準備は、次回、「自社ホームページの内容を整理する」ことから始まります。