ページごとのアクセス数を月別に解析しましょう(3) Googleアナリティクスのページ指標の定義(後編)

今回は「直帰率」「離脱率」「ページの価値」です。Googleアナリティクスの「すべてのページ」の指標、

 ページ ページビュー数 ページ別訪問数 平均ページ滞在時間 閲覧開始数 直帰率 離脱率 ページの価値

の最後の3つです。

・直帰率

直帰とは「サイトを見に来たが、1ページだけ見て帰って(離脱して)しまった」ということを意味します。

 アクセス01 ページA →×
 アクセス02 ページB → ページA →×
 アクセス03 ページA → ページC →×

といった状況があったとすると、アクセス01は「ページA」が閲覧開始ページで、しかもページAだけ見て離脱しているので、「直帰」となります。一方、アクセス02は「ページB」が閲覧開始ページで、「ページA」に移動し、離脱しました。2ページ見ているので、これは直帰にはなりません。

アクセス03では「ページA」が閲覧開始ページですが、「ページC」に移動してから離脱したので、直帰になりません。

この例でGoogleアナリティクスの「行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ」のデータを見ると、

      ページビュー数 ページ別訪問数 閲覧開始数  直帰率  離脱率
 ページA   3        3       2    50.00%  66.67%
 ページB   1        1       1     0.00%   0.00%
 ページC   1        1       0     0.00%  100.00%

となります。ページAは、閲覧開始ページに2回なって、そのうち1回直帰なので、直帰率は50%です。直帰率は閲覧開始数と直帰回数で計算します。

 直帰率 = 直帰回数 ÷ 閲覧開始数 ×100

です。一般に直帰率は低いほどうれしいのですが、次のような例だとどうでしょうか。

      ページビュー数 ページ別訪問数 閲覧開始数  直帰率
 ページD   120       100      10    50.00%
 ページE    60        60      60    30.00%

直帰率だけを比べると、「ページD」の方が50%と高く、30%の「ページE」より良くないページのように見えます。しかし、直帰率は閲覧開始数との関係で決まります。実際の直帰回数を考えてみると、

 ページD 直帰率50% × 閲覧開始数10 = 直帰回数 5
 ページE 直帰率30% × 閲覧開始数60 = 直帰回数 18

と、実際に逃げられている回数は「ページE」の方がはるかに多いことになります。せっかく60人も集客してくれているのに18回も逃げられてしまいました。

「ページD」は確かに直帰率は高いですが、もともと閲覧開始数が少ないので、「ページDの直帰率を引き下げよう」という施策はあまり優先順位が高くないと言えます。

Googleアナリティクスからデータをエクセルでダウンロードしたら、こんな計算をしてみると良いでしょう。

      ページ別訪問数  閲覧開始数 入口率  直帰率 直帰改善指数
 ページD   100       10   10.00% 50.00%   0.1
 ページE    60       60   100.00% 30.00%  18.0

エクセルに2つ、「入口率」と「指数」という2つの列を追加して計算しています。

 入口率 = 閲覧開始数 ÷ ページ別訪問数 ×100

つまり、各ページがどれくらい直接集客しているかを計算するものです。集客の割合が高いのに、直帰率が高いものほど集客ページとしての問題がより大きいということになります。

さらに、直帰率が高くても、閲覧開始数が少ないものはそれほど急いで直さなくても良いでしょう。そこで、

 直帰改善指数 = 閲覧開始数 × 入口率 × 直帰率

という計算をしてみると、この指数が大きいほど閲覧開始ページとしての問題が大きいことになります。(この計算は参考値をつくるためのものなので、出た数値そのものにあまり意味はありません)

      ページ別訪問数 閲覧開始数 入口率   直帰率  直帰改善指数
 ページF     1        1   100.00%   0.00%   0.0
 ページG     1        1   100.00%  100.00%   1.0
 ページH    60       60   100.00%  30.00%  18.0
 ページI   100       100   100.00%  10.00%  10.0
 ページJ   100        30   30.00%  100.00%   9.0

このように指数計算すれば、改善すべきは「ページH」が一番だと分かります。直帰率が高いだけの「ページG」であわてることもありません。

この計算はいつも必ずしなければならないものではありません。こうした目を持って、「集客に問題点はないだろうか」と考えていけば良いでしょう。

ただ、コンテンツマーケティングやSEOを行うと、「集客力があるのにほとんど逃げられてしまって、狙ったゴールに誘導できていない」というページが複数できてしまうことが多いものです。たくさんのページを扱っているとどのページが良いか、改善すべきか、見落としがちになります。コンテンツ制作を続けているが効果が出てこない、といった状況が続くと「徒労」「コストに見合わない施策」となってしまいますから、こうした計算を行って、問題ページを発見し、改善施策を行うことが不可欠です。

・離脱率

たとえば、訪問者は次のような動きをしていたとします。

 アクセス01 ページA → ページB → ページA →×
 アクセス02 ページC → ページA → ページB →×
 アクセス03 ページC →×

この場合は、

      ページビュー数 ページ別訪問数 閲覧開始数 直帰回数 離脱回数
 ページA  3        2       1      0    1
 ページB  2        2       0      0    1
 ページC  2        2       2      1    1

となります。直帰率は、閲覧開始数と直帰回数で計算しましたが、離脱率は「ページビュー数」と離脱回数で計算をします。

 離脱率 = 離脱回数 ÷ ページビュー数 ×100

という式になります。なぜページ別訪問数ではなく、ページビュー数と計算するかと言えば、上の例のアクセス01のように「行ったり来たり」行動があるからです。

ページ別訪問数と離脱回数で計算してしまうと、

 ページA:離脱回数1 ÷ ページ別訪問数2 ×100 = 離脱率50.00%
 ページB:離脱回数1 ÷ ページ別訪問数2 ×100 = 離脱率50.00%

とまったく同じになってしまいます。これではアクセス01でページAからページBに移動していることを反映できていません。

 ページA:離脱回数1 ÷ ページビュー数3 ×100 = 離脱率33.33%
 ページB:離脱回数1 ÷ ページビュー数2 ×100 = 離脱率50.00%

こう計算すれば、ページAの方が「離脱しなかったこともある」ということを反映して、離脱率が低く計算されます。この方が正確です。ちなみに、

 ページA:ページビュー数3 × 離脱率33.33% = 離脱数 1
 ページB:ページビュー数2 × 離脱率50.00% = 離脱数 1
 ページC:ページビュー数2 × 離脱率50.00% = 離脱数 1
                       離脱数合計  3

と合計3となり、これは「ユーザー > 概要」で見る「セッション」に一致します。訪れた人は必ずどれか1つのページで離脱をしているので、離脱数の合計がセッションに一致するのは当然ですね。Googleアナリティクスからダウンロードしたエクセルファイル上でこの計算を行って、合計を出すとたいていぴったりセッションと同じ数字が出てくるので、気持ちいいですよ。

●離脱率についての評価

直帰率では一般的に「直帰率が高いページは良くない」と考えることができますが、離脱率では必ずしもそうではありません。たくさんページを見てくれて、どのページを最後にしたか、というのは偶然です。必ずしもそのページが悪いから離脱したのではありません。

特にトップページや企業情報トップなどの目次ページは、そこからいろいろなページを見たあとで戻ってきて目次を眺め、「見たいページはだいたい見たな」と満足して帰るという行動がよく起こります。そのため、離脱回数についてはそうした目次ページほど多くなる傾向があります。

また、会社概要や交通アクセスのような「そのページを見ることで訪問目的が達成された」ページでも離脱率が高くなるのが普通です。これも訪問者は納得して離脱しているので、交通アクセスのページを直して「帰られないようにしよう」とするのはピントはずれの努力となることがあります。

単純に離脱率の高いページを直すより、「見せたいページを見てくれる人」をもっと多く集客する方が良いでしょう。たとえば、

 主力製品Aを見に来ている既存顧客に、新製品Bを見てほしい

といった筋書きを考えることです。その筋書きに基づいて考えれば、そうした人は

 トップページ
 製品情報トップ
 製品A

などのページを見ているはずですから、それらのページに新製品Bへの誘導を加えることが重要です。

・ページの価値

多くのサイトでこの「ページの価値」はすべて0になってしまっています。別途の設定をしないとこの値が算出されないのです。

その設定とは、「目標」の設定です。Googleアナリティクスでは、お問い合わせフォームの送信完了などを目標として設定します。目標の設定画面に価値を設定する項目があるのです。任意項目なので、ほとんどのサイトが「お問い合わせ完了」といった目標を設定しても、金額を割り当てていません。そのため、ページの価値が0になってしまうのです。

ぜひ、重要な目標には金額設定をして、ページの価値を測ることができるようにしましょう。

仮にお問い合わせが20件あれば、1件の新規契約がとれると考えてみましょう。営業決定率5%です。新規契約の単価が平均100万円だとすれば、

 契約単価1,000,000円 ÷ お問い合わせ20件 = お問い合わせ1件あたりの価値 50,000円

と考えることができるでしょう。そこで、「お問い合わせ」の目標設定画面で50,000円と入力します。

これがあれば、お問い合わせを完了した人が見たページには「価値」が生まれます。

         ページビュー数 ページ別訪問数 ページの価値
 トップページ  120       100       \500
 製品情報トップ 100        80       \625
 製品A      60        50       \1.000
 製品B      50        40       \0
 お問い合わせ   25        20       \2,500
 確認画面     12        10       \5,000
 完了画面     1        1       \50,000

となっているとすると、どうですか? お問い合わせを完了したのは1人だけで、製品Aを見てからお問い合わせをしてくれたのでしょう。製品Bを見たのは40人いましたが、誰もお問い合わせを完了していないから価値はゼロ円となっています。

それに対して、製品Aは50人が見て1人がお問い合わせ完了したので、このページは50,000円の価値につながったのです。50人で50,000円の価値なので、このページの期待値は1,000円という計算になります。

 設定価値50,000円 ÷ ページ別訪問数50 = ページの価値1,000円

です。この金額が高いほど、そのページを見た人が目標に到達する期待値が高い、ということが分かります。トップページはたくさんの人が見ていますが、そこから目標に到達したのが1人だけとなると、価値としては薄まってしまいます。

それでも、ページの価値が500円と出ていれば、「トップページはお問い合わせに寄与するページだ」と判断することができますね。上の例ではお問い合わせ完了したのが1人だけだったのでトップはかなり薄まった感じになります。実際にはトップのようなページは多くの目標到達に寄与しているので、もう少し高い金額が出てくるかもしれません。

Googleアナリティクスではこのような目標を20個設定することができます。20個の目標にすべて異なる金額を設定していくと、漠然と目標に寄与する期待値の高いページを見つけることができます。「漠然と」というのが難しいところですね。つまり、全部の目標について金額で計算して合算された状態になるので、「どの目標に何回到達したか」を分別することはできません。

同じようなデータ項目で「行動 > サイトコンテンツ > ランディングページ」という画面がありますが、この画面では各ページが閲覧開始ページ(=ランディングページ)になった場合にどの目標に何回到達したかをすべて見ることができます。これは、

 そのページから閲覧を開始した人がこの目標に到達した

ということがはっきり特定できるためです。

それに対して、今見ている「行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ」では、それが特定できません。あるページを見た、というのは目標到達行動の途中経過でしかないからです。

それでも、「ページの価値」を見れば、どのページが目標到達に寄与しているかを判別することができます。うまく利用して、効果的なページを知り、そのページにより多くの訪問者を誘導するようにしましょう。

コツとしては、

・すべての目標に金額を設定する必要はない

ということになるでしょう。特に重要で増やしたい目標だけに金額を設定して、どのページが重要な目標に寄与しているかを判別できるようにすることです。

ちなみに、先ほどの例では

         ページビュー数 ページ別訪問数 ページの価値
 お問い合わせ   25        20       \2,500

と、目標に近いページはとても高い金額になっていました。これは自然なことです。先に進めば進むほど、訪問数は少なく、目標到達確率は高くなるからです。たとえば、お問い合わせをする前に「プライバシーポリシー」を読んでからフォームを送信する仕組みになっていたら、プライバシーポリシーのページは非常に高い「ページの価値」になるでしょう。だからと言ってプライバシーポリシーのページにたくさんの訪問者を誘導するというのは無意味です。その人はプライバシーポリシーを見たからお問い合わせをしようと考えたのではなく、お問い合わせをする過程でプライバシーポリシーを見る必要があったというだけです。

ページの価値は、単純に数字だけを見てページを評価するのではなく、ページの内容とあわせて判定するものです。

上の例のように、お問い合わせがページの価値が高いのは自然なことですが、たとえば全体で2,000セッション(訪問)あったとしたらどうでしょうか。

 全体のセッション 2,000 → お問い合わせフォームのページ別訪問数 20

ということです。つまり、訪問の1%しかお問い合わせフォームに到達していないことになります。一方、

 お問い合わせフォームのページ別訪問数 20 → お問い合わせ完了数 1

ということは、お問い合わせフォームの完了率は5%あります。このサイトがお問い合わせが少ないとしたら、お問い合わせフォームが使いにくいからではなく、そもそもお問い合わせフォームに到達していないからだと考えるべきかもしれません。

もし2%の人をお問い合わせフォームに誘導できれば、

 全体のセッション 2,000 → お問い合わせフォームのページ別訪問数 40
 お問い合わせフォームのページ別訪問数 40 → お問い合わせ完了数 2

と、目標完了数を増やすことができると期待されます。つまり、

・目標に近いから「ページの価値」が高いページのうち、重要なページについては
 そのページへの到達率を高める施策を行う

ことが、目標到達数を増やすことにつながります。

やっと最後まで来ました。ここまで3回にわたって、Googleアナリティクスの「行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ」の項目について、定義や考え方をご説明してきました。次回から、いよいよ月次でデータをとってページを評価するというプロセスに入りましょう。