PDCAサイクルでウェブを管理するには、Pが大切

前回、「PDCAサイクル」では「Do」を試行、Actionを実行ととらえて、

 P-D-C-P-D-C-P-D-C-P-D-C-A

という順序で進めましょうと書きました。今回は、一番肝心の「Plan」について考えていきましょう。

●「Plan」(計画)は、計測できることが肝心です

PDCAサイクルにはさまざまな説明がありますが、もともとは生産管理などの分野で生まれたものであることは異論がないところです。

生産管理の分野では、科学的にプロセスを進めることが重要で、客観的に評価できるようにしなければなりません。

その際に注意されるのは「一度に全部進めない」ということです。

いろんな施策を一度にいろいろやってしまうと、何が効果的で何が効果がなかったのか、ごっちゃになってしまって評価できません。かぜをひいたというので、うがいをする、風邪薬を飲む、よく食べる、よく眠る、少しずつ身体を動かす、焼いたねぎをのどに巻く、祈る、とあらゆる方法を一度にやって早く治そうとします。

その結果、かぜが治りました。それから振り返ってみて「よく眠ったのが効果的だった」と分別するのは不可能です。もしかしたら祈りが効いたのかもしれません。ひょっとしたら、自然に治ったのかもしれません。

私たちが仕事のために「Plan」するとき、こんなことをやってしまっているのです。これは本当の意味ではPlanとは言えません。

Planを正しく表す言葉として一番良いのは「実験計画」だと思います。

実験計画は、コロナの薬やワクチンの治験の話でよく出てきましたね。偽薬のグループとワクチンのグループで結果に差があったかどうか。他の条件を全部同じにしているので、結果に差があったらワクチンの効果だと考えられる、ということになります。

すべての条件を同じにして、1つの実験条件だけを変える。それで結果がどう違うかを見るのです。

ホームページの世界でこれが一番典型的に失敗しやすいのは、「リニューアル」です。

リニューアルの際には、この施策も良い、あの施策もおすすめ、と良いと思われる施策をたくさんつめこみます。風邪をひいた時と同じで「早く治したいから」です。でも、複数の施策を並行して行うと、どの施策が効果的だったか分別することが難しいです。

そうは言っても、リニューアルとはあるタイミングで完成を迎えていちどきに公開しなければなりません。

ホームページでリニューアルの際に「PDCAサイクルをつくりましょう」と言っても、評価に意味がなくなり、Checkすることができません。仮にチェックできても、Actionする予算もありません。サイクルが回るはずがないのです。
ではどうすれば良いでしょう?

ホームページのPDCAサイクルは、今、始めれば良いのです。

今のサイトでどこが良くないのか、もっとこうすれば良いのではないか、という仮説をたくさんたてることができますね。それをリストアップして、今から1項目ずつ実験していくのです。

毎週1項目ずつ実験すれば、リニューアル作業に入るまでにあと半年あるとすれば、25項目実験できます。そのうち10項目が効果的で、15項目が効果がなかった、という実験結果を手にすることができるわけです。この結果をもってリニューアルにかかるから、より効果的なリニューアルができます。

 P-D-C-P-D-C-P-D-C-P-D-C-A

です。リニューアルは「Action」だと考えてください。それまでに実験を行って、ノウハウを蓄積した会社がリニューアルに成功するのです。

●どんな実験計画を立てれば良い?

より具体的に、実験計画についてご説明しましょう。毎週、小さな実験を行っていきます。

たとえば、今のサイトに次のような課題があるとします。

 ・自然検索からの集客が少ない
 ・お問い合わせが少ない
 ・直帰率の高い閲覧開始ページが多い
 ・売りたい商品Aの特長ページの閲覧が少ない

リニューアルはこれを一度にやろうとするのですが、リニューアルではデザインやページ構成が変わったり、作業そのものが大変なので、これらを狙い通りに実施することができません。当然、評価もできないのです。

では、まず、こうした課題に順序をつけましょう。

 ・自然検索からの集客を増やしたいが、直帰率が高い現状では効果が出ない
 ・売りたい商品Aの特長ページの閲覧を増やさなければお問い合わせも来ない

という関係がありますから、課題に順序をつけることができます。

 1)まず閲覧開始ページの直帰率を引き下げる
 2)サイト内で商品Aの特長がもっと見られるようにする
 3)お問い合わせフォームがもっと見られるようにする
 4)自然検索からの集客を増やす

この順序で行って結果を出していけば、効果を測り、効果のある方法を学ぶことができるでしょう。

まず、直帰率から取り組んでみましょう。今のサイトについて、Googleアナリティクスで「行動 > サイトコンテンツ > すべてのページ」からデータを取ります。各ページのデータは、

 ページ ページビュー数 ページ別訪問数 平均ページ滞在時間 閲覧開始数 直帰率 離脱率 ページの価値

となっていますが、この中で、

 ページ別訪問数 閲覧開始数 直帰率

に注目します。

すべてのページのデータは初期状態ではページビューの多い順に並んでいて、しかも上位10項目しか表示されていません。このトップ10ページというのは、トップページや製品情報トップ、企業情報トップなど、目次のページばかりで、必ずしも見せたい内容を含んだページではありません。意外なページが検索などから多く集客するので、トップ10だけ見るのではなく、全ページのデータを見るようにしたいものです。

そこで、トップ10が並んでいる表の一番下を見てください。下欄外の右側に、

 表示する行数:10 ▼ 移動:1 1 – 10/160 < >

と表示されています。ここは入力フォームの形になっていて、ここを変更すれば表示を変えることができます。右端に「1 – 10/160」とあるのは、全部で160URL(ページ)があるうちの最初の1~10を表示しています、という意味です。この状態で一度右向きボタン「>」をクリックすれば

 表示する行数:10 ▼ 移動:11 11 – 20/160 < >

となって、ページビュー数の多い11番目から20番目までのページが表示されます。これではまどろっこしいので、1つの表に全160ページを表示するようにしたいものです。そこで、「表示する行数」をクリックすると、プルダウンメニューが表示されて、

 10
 25
 50
 100
 250
 500
 1000
 2500
 5000

と選択肢が出てきます。今は160ページですから、それより大きい「250」という選択肢を選べば、160ページを1表で表示することができます。160なのに250を選ぶなんて90も多いじゃないか、と心配になるところですが、あるだけしか表示されないので、気にすることはありません。「250」を選んで160まで全部を表示してください。

この選択肢を見れば分かる通り、Googleアナリティクスでは、一度に5000ページまで表示することができます。御社のサイトが5001ページ以上あるとしたら、一度ではデータをダウンロードできません。その場合は2回、3回に分けてダウンロードするようにしてください。

この状態でデータをエクスポートして、エクセルで開きます。ダウンロードデータは保護状態になっているかもしれませんから、その場合はエクセルファイルの上部に表示される「編集を有効にする」ボタンを押して、編集できるように変えましょう。

さて、これで全部のページのデータを、編集できる準備ができました。大事なのは、

 ページ別訪問数 閲覧開始数 直帰率

です。たとえば

       ページ別訪問数 閲覧開始数  直帰率
 ページA  325      299    52.32%

というページがあったとしましょう。このサイトではこの期間のセッション数が1,015でした。これを計算してみると、

 ページ別訪問数 325 ÷ セッション数 1,015 = 訪問シェア 32.0%
 閲覧開始数   299 ÷ セッション数 1,015 = 集客シェア 29.5%

となります。エクセルで列を挿入してこの計算式を入れ、

      ページ別訪問数 訪問シェア 閲覧開始数  集客シェア 直帰率
 ページA  325     32.0%   299   29.5%   52.32%

としてみましょう。これで、ページの改善重要度が見えてきます。

ただ、サイト内のページには、集客力のあるものとないものがあります。集客力がないから悪いわけではなく、

     ページ別訪問数 閲覧開始数
 ページA  100      10
 ページB   50       40

と、同じような訪問数でも、ページの性質の違いが出てきます。訪問数が多くて重要なページはページAですが、集客力が高いのはページBです。ページAの方は、集客力がありませんが、どうして訪問数が多いかと言えば、サイト内で多くの人に選ばれているからです。この違いを見極めるにはもう1つ計算すると良いでしょう。

 閲覧開始数 ÷ ページ別訪問数 = 集客率

      ページ別訪問数 閲覧開始数 集客率
 ページA  100       10    10.0%
 ページB   50       40    80.0%

ということになります。先ほどのデータにも適用すると、、

    ページ別訪問数 訪問シェア 閲覧開始数 集客シェア  集客率  直帰率
 ページA  325   32.0%   99   29.5%   92.0% 52.32%

となります。これを見れば、「集客率が高くて、かつ直帰率が高いページ」が対策の対象になると考えられます。ただし、集客率については、

     ページ別訪問数 閲覧開始数 集客率
 ページA  1       1    100.0%

と、重視すべきでないページで集客率が高いということが起こります。100.0%というだけでこのページをリストに入れていては実験がうまくいきませんから、「ページ別訪問数が10以上に限る」といった限度を設けてください。

限度をどうすれば良いか分からないというかたもあるかもしれませんが、限度を決めてみて、対象となるページが少なくなり過ぎないように限度を設定すれば良いでしょう。限度を高く設定すれば、「10ページしか対象にならない」というのでは実験が有効なものになりません。「2000ページも対象になってしまう」だと手に負えないかもしれませんね。

本当のことを言えば、集客力と直帰については訪問数10で閲覧開始数8といったページは、対象にした方が良いと思っています。こうした集客力の高いページは、強いニーズを持った訪問者の入口になっている可能性があるからです。

これで対象となるページを抽出できます。条件は、

 ページ別訪問数が10以上のページのうち、
 集客率が50%以上で、
 かつ直帰率が50%以上のページの直帰率を引き下げよう

ということになります。

仮にこれが、30ページあるとしましょう。いよいよPDCAの「P」を具体化します。

しかしまた長くなってしまいました。実際に直帰率を引き下げるためのサイクルについて次回考えていきます。