Googleアナリティクスから月次でデータを取得する

Googleアナリティクスは過去1週間、あるいは過去30日間のデータを見る、というのが基本の設定になっています。頻繁にデータを見ている人にとっては、ログインしたタイミングから過去を振り返るというのが当然ですから、それで良いのですが、会社の管理の考え方には適していません。

会社としては、月次でデータをとって、前月や前年同月と比較してどうだったのか、ということを考えられるようにしなければ管理が難しいでしょう。

今回はそんなGoogleアナリティクスから月次でデータをとる方法について、じっくり見ていくことにしましょう。

■前月のデータをとる方法

月次でデータをとるというのは、毎月月初めに前月のデータを取得してエクセルなどのファイルに記録し蓄積していくという作業です。

もちろん月初は他の仕事も忙しいので、データの作業は月の中ごろになるという人もあるでしょう。もっとも、ウェブについての月次の会議が第2週の水曜日にあるといったサイクルになっている会社も多く、それまでにデータ取得を終わらせて報告の用意をしなければなりません。

第1週が1日しかない場合、第2週の水曜日は4日ということになり、月が変わってすぐに作業しなければ間に合いません。ウェブ担当者は大変なのです。

ぼやいていても仕方ありませんね。手早く作業を進める方法をお話していきましょう。

まずはGoogleアナリティクスにログインしてください。簡単なダッシュボードが表示されますが、今は気にせず、左メニューから「ユーザー」を押し、表示されるリストから「概要」を選びます。

 ユーザー > 概要

この画面がGoogleアナリティクスを見るには最も基本の画面です。ここには、

 ユーザー、新規ユーザー、セッション、ユーザーあたりのセッション数、ページビュー数、ページ/セッション、平均セッション時間、直帰率

が分かります。この中で、

 ユーザーあたりのセッション数 = セッション ÷ ユーザー
 ページ/セッション = ページビュー数 ÷ セッション

と、他の数字で計算すれば出てくるものも含まれているので、月次でデータを記録する場合にはあまり気にしなくても大丈夫です。データを取り込んでから、あとでエクセルで計算した方が早いですからね。

ただ、ユーザーあたりのセッション数は、1人のユーザーが期間中に何回見に来てくれたかを示す重要な指標です。1人が1ヶ月に1回しか来ないサイトなのか、2回3回とリピート訪問するサイトなのか。これはしっかり見る必要があります。

ページ/セッションも、指標の名付け方が悪いだけで、これはいわば、1回来てくれるたびに平均何ページ見てくれているかを示すもの。重要なことは言うまでもありません。1回来たら10ページ見てもらえるサイトと2ページしか見られないサイトでは、同じ集客数でも情報発信力の違いは明らかです。

●カレンダーを開いて前月を指定

この画面で前月のデータを取得するために、期間を設定しましょう。まず画面の右上に、今データを出している集計期間が表示されています。これを書いている今日は2021年6月8日なので、右上には

 2021/06/01 – 2021/06/07

と表示されています。これは初期値が1週間の場合ですね。もちろんこの「直近1週間」というスパンでデータを見ることに慣れるのも大切です。先週より良くなったな、この前発行したメルマガは反応が良かったようだな、ということを感じられるようになることはウェブ担当者にとって大切なことです。

今は月次でデータを見るのが目的ですから、期間を変更しましょう。

この日付表示に「▼」がついていますから、クリックしてください。Googleアナリティクスはあまり説明してくれませんが、「▼」がついているか、文字が青色になっているところはすべてクリックすると何か表示されるので、片端からクリックすることをお勧めします。

日付をクリックすると、集計期間指定用のカレンダーが表示されます。カレンダー上に今集計表示されている「6月1日~6月7日」が選ばれた状態になっているでしょう。

今はこれを、前月の5月1ヶ月に変更する必要があります。

 2021/05/01 – 2021/05/31

とできれば良いわけですね。カレンダーの画面で、右側には今選ばれている期間がフォームになっています。

 [2021/06/01]-[2021/06/07]

と、開始日と終了日がそれぞれのテキストボックスに分かれています。それぞれのボックスの中を選んでキーボードから書き直して、

 [2021/05/01]-[2021/05/31]

に書き直すのも1つの方法です。でも、この書式はなかなか面倒で、「/」が抜けるとミスになってしまうのでもっと直感的にやりたいですね。

そこで、カレンダーの日付をクリックする方法が簡単です。

カレンダーは選びやすいように3ヶ月分が表示されています。今が6月8日なら、カレンダーには4月、5月、6月の3ヶ月が表示されているでしょう。その中で、6月1日~7日が選ばれているはずです。

カーソルを動かして、5月1日をクリックしてください。すると、5月1日が選ばれます。右のフォームを見ると、ちゃんと開始日のテキストボックスが

 [2021/05/01]

になっているのが分かるはずです。ただ、終了日をまだ指定していないので、終了日は元のまま、

 [2021/06/07]

になっています。つまり、現時点では、

 [2021/05/01]-[2021/06/07]

という38日間が選ばれた状態になっています。よく見ると、終了日のボックスに青枠が移動しています。今は「終了日を選ぶタイミングですよ」とGoogleアナリティクスが教えてくれているのですね。そこで、5月31日をクリックしてください。すると、選択された範囲が変わって、

 [2021/05/01]-[2021/05/31]

になります。この状態で、テキストボックスの下にある

 適用

というボタンを押せば、Googleアナリティクスは再集計を始め、ちゃんと5月の31日間のデータを表示してくれます。

これで良いのですが、今はちょうど1ヶ月分のデータを出したいので、その場合にはもっと簡単な方法がありますのでご紹介します。

カレンダーには3ヶ月分の日が表示されています。その見出し部分には

 2021年4月 2021年5月 2021年6月

と、年月の表示があります。これが青色の文字になっていますね。つまりクリックできるということを示しています。そこで、「2021年5月」をクリックしてみましょう。

このクリック1回で、5月の31日間が選択され、開始日と終了日のテキストボックスが

 [2021/05/01]-[2021/05/31]

に変わったでしょう。きれいに1ヶ月を選択するならこの方法が一番楽です。「適用」を押して、データを表示させてください。

この伝で、「2021年4月」をクリックすれば、4月のデータをとれます。カレンダーの「2021年4月」の左側には左向きの▼が描かれていますから、これをクリックすれば「2021年3月」が表示されます。どんどん▼をクリックすれば2月、1月とさかのぼってデータをとることができるわけです。

サイトの成長を見ることが、ウェブ担当者にとっては仕事の評価そのものですから、データが取れる限りさかのぼって、ぜひ月次のデータを取得してください。

●「ユーザー > 概要」のデータ取得は手書き?

さて、目指す2021年5月の31日間のデータが表示されたら、それをエクセルに記録するわけですが、これが実は面倒です。「ユーザー > 概要」に表示されているデータ、

 ユーザー、新規ユーザー、セッション、ユーザーあたりのセッション数、ページビュー数、ページ/セッション、平均セッション時間、直帰率

を、一気にエクスポートしてエクセルにできれば良いのですが、それができません。画面の上部にある「エクスポート」というところからエクセルのデータをダウンロードすると、今折れ線グラフに表示されている日別のユーザー数のデータが届くだけなのです。これは「エクセル」だけではなく、「CSV」でも「Googleスプレッドシート」でも同様です。

画面に表示されている1ヶ月のユーザー数やページビュー数をそのまま保存するにはエクスポートの中から「PDF」を選ぶしかないのですが、こうなるとPDFですから取り込んだデータで集計作業などを行うのは面倒です。

つまり、エクセルファイルを開いておいて、ユーザー数やページビュー数を手で書き写していくしかない、というとても面倒なことになります。

エクセルでは、

        ユーザー 新規ユーザー セッション ページビュー数
 2021年5月   1,000   800    1,400    3,000

といった形で書き写していきましょう。これを毎月記録していく、もしくはGoogleアナリティクスでさかのぼってデータを取得すれば、手元のエクセルに貴重なデータが蓄積されていきます。

■月次データからの計算について

ここからはある会社サイトの実測値でご説明しましょう。仮に2021年1月までさかのぼってみますね。

        ユーザー 新規ユーザー セッション ページビュー数
 2021年1月   316    309    348      759
 2021年2月   270    264    316      591
 2021年3月   338    327    392      758
 2021年4月   344    335    418     1,107
 2021年5月   367    355    433      965

となります。これを元に成長グラフを描いたり、指標どおし計算して、新規ユーザー率、ユーザーあたりのセッション数、ページ/セッション(平均ページ数)などの指標を導くことができます。

      ユーザー  新規     新規    セッション  ユーザーあたり   ページ     ページ/
            ユーザー  ユーザー率       のセッション数  ビュー数   セッション
 2021年1月  316    309   97.8%    348     1.10       759     2.18
 2021年2月  270    264   97.8%    316     1.17       591     1.87
 2021年3月  338    327   96.7%    392     1.16       758     1.93
 2021年4月  344    335   97.4%    418     1.22      1,107     2.65
 2021年5月  367    355   96.7%    433     1.18       965     2.23

エクセルならあっという間に計算できますね。

●月の日数が違うのに、比較しても大丈夫?

成長率はどうでしょう。セッションだけ取り出して対前月の比率を出してみると、

      セッション  対前月
 2021年1月   348
 2021年2月   316   90.8%
 2021年3月   392  124.1%
 2021年4月   418  106.6%
 2021年5月   433  103.6%

となりますね。1月より2月は少し減りましたが、それ以降はそこそこ順調に増えている、ように見えます。

しかし、ここで疑問がわきますね。1月は31日あるのに対して、2月は28日しかない。3日も短いです。30日の3日はほぼ10%。2月が対前月比90.8%というのはただ日数が短かっただけじゃないのか。

一方、3月も31日あるから、2月に対して124.1%というのは「伸びた」とは言えないのではないか…。

そこで、この日数の問題を解決しなければなりません。必要になるのは、全部の月を30日に換算することです。

1月は31日ありますから、

 348セッション ÷ 31 = 1日あたり 11.23セッション

これが30日あるとすれば

 11.23セッション × 30 = 30日換算 337セッション

となります。2月も同様に日数で割って30倍してみましょう。

 316セッション ÷ 28 = 1日あたり 11.29セッション
 11.29セッション × 30 = 30日換算 339セッション

実は、1月と2月はほぼ同数、2月の方がむしろ多かった、ということが分かります。

これを全部の月でやってみると、

       日数  セッション  1日あたり  セッション(30日換算) 対前月
 2021年1月  31   348     11.23      337
 2021年2月  28   316     11.29      339      100.5%
 2021年3月  31   392     12.65      379      112.0%
 2021年4月  30   418     13.93      418      110.2%
 2021年5月  31   433     13.97      419      100.2%

ということになります。先の前月比とはずいぶん印象が違いますね。減少なく増加しているようですが、必ずしも伸び率が高いとは言えないかもしれません。

実際にはこの調子でデータを蓄積し、前年同月比や前四半期比、前年同四半期比、年率換算前年比など、経済指標で使われるさまざまな比較の仕方を計算することができるわけです。

もちろんウェブ担当者が言いたいことは、

 ほら、私のおかげで伸びたでしょ

ということだけなのですが。

会社として理解しやすい形で月次のデータを報告することで、「これだけ伸びているなら良いね!」と思ってもらうこと、何なら「もっと予算を出そうじゃないか」「もう1人つけようじゃないか」と思ってもらえる日が来ることを願いましょう。

逆に言えば、こうした報告がなければ、「人を増やしてくれ~」「予算を出してくれ~」とウェブ担当者が言っても会社は出しようがない、ということです。それどころか、ウェブ担当者の給料っていくらが適切だろうか、という話になってしまいます。

全企業のウェブ担当者がこの作業をやってないのは、自分のためにならないと言う他ありません。

今回はここまでです。次回は、月次のデータを出すためのもう少し楽な方法をご紹介しましょう。そんな方法があるなら先に言ってくれ~ということだと思いながら。