ホームページのアクセス解析で分かること

ホームページではアクセス解析が大切だと聞きますが、どこまで分かるのでしょうか? という質問をよくいただきます。

Googleアナリティクスを見れば、非常に多くの項目があって、「どこを見れば良いのか分からない」とみんながぼやいているのと対をなしていますね。いろいろなことが分かるので、自分が何を知りたいのかをしっかり持っておくことが大切です。

●アクセス解析では何が分かる?

アクセス解析では、記録がとれることが決まっています。大きく分けると、

 1)アクセスしている人の環境
 2)アクセスの日時やアクセス経路
 3)どのページやファイルをどんな順番に見たか

ということになります。ECサイトでどの商品を見たかというのも、3番に属するわけですね。この1,2,3を掛け合わせると、「どんな人がいつお問い合わせをしたか」といったことを深堀りできるのです。

(1)アクセスしている人の環境

まずはユーザーの環境について、分かることはどんなことでしょう。アクセスした人の名前は、本人が書き残してくれないと分かりません。これは仕方ありませんね。分かるのは、

・使っているデバイス(パソコンかスマホかタブレットか)、そのOS、ブラウザ、画面サイズ
・地域(都道府県、市町村、海外の国や地域)
・新規訪問者かリピーターか

などが分かります。

●デバイス

スマホなどの場合は機種名なども分かります。ブラウザではそのバージョンも追いかけられます。

たとえばB2Bでは長らくインターネットエクスプローラーを重視してきましたが、今はかなり少なくなってきて、2~3%くらいのサイトが多いようです。だとすると、そろそろインターネットエクスプローラーに手間をかけて対応しなくても良いかもしれませんね。

また、画面サイズが分かれば、サイトの横幅をどれくらいにするか、スマホをどれくらい重視するか、ということを判断できます。B2Bのサイトではスマホは少ないと思い込んでいる人もありますが、調べてみると40%程度がモバイルからのアクセスというB2Bサイトはもう珍しくありません。

B2Bサイトでスマホやタブレットからのアクセスが少ないのは、B2Bサイトの多くがスマホやタブレットを重視したつくりになっていないだけのことだったりします。たとえば工場に納入している機械をつくっているメーカーなら、工場現場ではタブレットを使っていることも多いので、もっとタブレットに最適化したホームページにすれば、タブレットからのアクセスはもっと増えるはずです。「うちはB2Bだからモバイルは少ない」と決めつけていると損をします。

●地域

地域はしっかり見て調整したい項目です。全国からまんべんなくアクセスがほしい会社なら、人口比と比較して、アクセスの少ない都道府県を見つけ出し、そこ向けのキャンペーンを展開するなどして増やすべきです。

逆に、支社のある地域に集中したいなら、支社がある地域からのアクセスが増えるように、ホームページの中の地名の扱いを考えましょう。本社が東京にあって支社が札幌にあるとすると、札幌からのアクセスは大きく伸ばしたいところでしょう。ホームページでは「北海道」や「札幌」という言葉がどれくらい使われているでしょうか。企業情報の「事業所一覧」にしか「札幌」と書いていなければ、札幌からのアクセスが多くはならないですね。まずは札幌支社のページをつくったり、全ページのフッタに札幌支社の所番地を掲載するなどして、札幌にもあるぞということを強調したホームページにすべきでしょう。

海外に展開している会社なら、国別のアクセスは意識すべきです。売ってもいない国からどれだけアクセスが多くても面倒なだけかもしれません。

●新規/リピーター

新規の訪問者か、それともリピーターか、という情報は分析の基本です。新規訪問者とリピーターは行動が違います。初めて訪れるときはトップページから来た人でも、次に来る時は「このページをもう一度見たい」というページから再訪問するかもしれません。ということは、リピーターの閲覧開始ページになっているページは「もう一度見たい」と思われている価値のあるページということになるでしょう。

検索から深い階層のページに新規訪問した人が、再訪問時にはトップページから訪れてくれたのなら、「この会社は良い会社だ」と理解してくれたのかもしれませんね。

新規訪問者がどのページを見ていて、リピーターがどのページを多く見ているかということは常にしっかり分析しておく必要があります。リピーターが好むページを新規訪問者に気付かせれば、リピーターになる確率が高まります。毎月新規訪問者が一定数訪れて、そこから一定数がリピーターになるとすれば、時間とともにアクセス数は増えるという理屈になります。

(2)アクセスの日時やアクセス経路

いつアクセスしたかというのも本来は重要な情報です。昼間は忙しくて1回のアクセスで2ページ程度しか見てくれないが、夜訪れたときはゆっくり4,5ページ見てくれる、ということもあるでしょう。夜「ユーザーサポート」を見ている人は電話がかけられないので怒っているということも考えられます。

一般にB2Bサイトは平日のアクセスが多く、土日には少なくなります。店舗がある会社なら、金曜日にアクセスが多ければ土日には実際の来店が増えるかもしれません。そうしたリズムを把握すれば、いつ会員にメールを送れば良いかも決まってくるでしょう。

B2Bサイトは土日のアクセスを重視しない傾向がありますが、土日は日ごろ忙しくてできない情報収集をしている人もありますから、週末に新規訪問者と出会うことは大切なことです。

●期間比較の重要性

また、前後の期間を比較してどれだけ変化があったか、ということはとても重要です。「期間比較」と呼びますが、前後の期間を比較して、あるキーワードでの検索訪問者が増えたか、お問い合わせが増えたか、といったことがウェブ担当者の評価そのものとなります。

Googleアナリティクスというツールを使っている会社が多いですが、Googleアナリティクスは期間比較がとてもやりやすいツールですから、常にこの比較を行って、実施した施策が効いているかどうかを確認しながら作業を進めてください。

アクセス解析は「差分」です。施策の前と今を比較すれば必ず変化があります。変化がないなら、その施策は「空振り」だったということです。空振りというのは残念なことですが、その施策は空振りだ、ということが分かるだけでも大きなノウハウです。空振りの施策は捨て、反応の多い施策を残していけば、次第に打率の高いホームページになっていくのです。

●アクセス経路とは?

うちのホームページを発見するのに、「どこ」から来てくれたのか、ということを見ておきたいところです。検索対策を行えば、自然検索からの訪問者が増えていくはずです。QRコードを入れたチラシをまけば、QRコードからのアクセスが増えるはずです。もし増えなければ、そのチラシは失敗ということになります。

検索エンジンから来たのか、外部のサイトからリンクをクリックして来てくれたのか、というアクセス媒体のことを「チャネル」と呼びます。どのチャネルから多くの人が来たのかは重要です。

放っておいてチャネルのデータを見ると、自然検索が一番多いのが普通です。特に検索対策を行っていないサイトでも、60%程度の訪問者が自然検索から訪れていると考えて良いでしょう。取引先が会社名で検索して訪れることが多いためです。

今のサイトは「人見知り」で、外部サイトにリンクをはるという作業ができていません。しかし、B2Bサイトでは業界団体や業界紙のサイト、共同研究を行っている大学などのサイトからのリンクはとても有力です。オンラインプレスリリースを発信していれば、そこからのアクセスもばかになりません。自社の作業だけで完結できるSEOやコンテンツマーケティングなど、検索チャネルの施策だけを重視するのではなく、「どのチャネルを増やすことができるか」をしっかり考えるようにしましょう。

(3)どのページやファイルをどんな順番に見たか

ページのアクセスはアクセス解析で一番見られるところです。Googleアナリティクスなど、普通のアクセス解析ツールでは、初期状態ではトップ10のページを見せてくれます。が、トップ10のページというのはトップページや製品情報トップ、企業情報トップなど、「多くて当り前」のページばかりでちっとも面白くないことが多いものです。

会社に報告しても、「トップページのアクセスが多いことは分かった、それで?」なんて言われてしまいます。

見どころの1つは、全体の訪問数とトップページのアクセス数の比較です。全体の訪問数が1,000人だとすると、一番アクセスの多いトップページのアクセスは何人だと思いますか?

多くの会社で7割か8割の人がトップページを見ていると思っていますが、実際にはトップページを見ているのは200人前後です。2割しかトップを見ていないのです。多くのサイトでトップページにだけ重要なバナーが掲載されていたり、最新情報が掲載されていますが、それは2割の人にしか伝わらないのです。まずは、「ページの中ではトップページのアクセスが多いが、2割の人しかトップを見ていない」といったことをきちっと把握してください。

アクセス数トップ10のページだけを見ていても、決まり切っていてあまり面白くありません。大切なことはもっと下位の、「本当に見てほしい」ページがどれくらい見られているか、ということです。

多くのサイトでは既存顧客が製品を確認に訪れるため、既存の主力製品のページが多く見られています。広報宣伝でも主力製品に一番力を入れていますから、これは当然のことです。

でも、今見せたいのは「売り出し中の新製品」のページかもしれません。そのページのアクセスを伸ばすことがウェブ担当者の第一の仕事です。

「アクセス解析で何を見れば良いか分からない」と言うウェブ担当者が多いですが、まずは、「見せたいページ」がどれくらい見られているかを確認し、増やす努力をすることだとお伝えしたいですね。

各製品のページがどれくらいアクセスされているかは、時系列で記録していきましょう。製品にはライフサイクルがあって、最初はアクセスが多く、次第に減っていきます。しかし、売り続けている限り、あまり減ってもらっては困ります。各製品のアクセスを確認し、減ってきたらキャンペーンなどの手を打ってアクセスを盛り返すということの繰り返しです。それがウェブの運営だということになります。

●見せたいページのアクセスを増やす手順

まずは「見せたいページ」がどれかを意識します。アクセス解析でそのページのアクセスがどれくらいかを確認します。仮にそれが週に100人だとすると、これを150人に増やすことがミッションだということになるでしょう。

増やす方法は次の2つしかありません。

・サイトに訪れた人がそのページに移動するようにする
・そのページを見たいと思って訪れる人を増やす

まずは、サイト内にそのページへのリンクを増やしましょう。バナーをつくって別のページに入れ、クリックされるようにします。もちろん、今アクセスの多いページに入れると効果的です。ややアクセスが少ないページでも、各ページから1人、2人と移動させられればOKです。

各ページから平均3人ずつ移動させられれば、20ページにバナーをはれば、見せたいページのアクセスは60人も増えるわけです。

この作業は、広告を出して集客をするより安上がりなので、先にこの作業をすべきです。

そしてアクセス解析を行い「期間比較」ということをします。前の1週間と作業後の1週間を比較すると、そのページのアクセスがどれだけ増えたかが分かります。Googleアナリティクスでは、「ナビゲーションサマリー」という画面があって、この画面を期間比較で見れば、前後1週間でどのページからの移動が増えたかを確認することができます。

ホームページの効果はお問い合わせ数や採用のエントリーだけです、というサイトは多いですが、まずは「見せたいページが多く見られるようになる」というのが基本的な効果ですから、この施策と期間比較はアクセス解析の基本だと言えます。

次に「そのページを見たいと思って訪れる人を増やす」という作業にかかります。これを自然検索で行うなら、「SEO」「コンテンツマーケティング」が有力です。手っ取り早いのは広告を出すことですが、これは大きなコストがかかります。

見せたいページが新製品なら、その製品に関連する情報をニュースの形にして、プレスリリースを配信しましょう。ニュースサイトからリンクをクリックして来てくれる人は「この製品を見たい」と思ってきてくれる確率が高いので有効です。

●お問い合わせフォームのアクセス

見せたいページのおそらく筆頭は、お問い合わせです。一般にお問い合わせはフォームになっていて、

 お問い合わせフォーム → 確認画面 → 完了画面

と進む仕組みになっています。サイトの目標が完了画面のアクセスが増えること(=お問い合わせが増えること)だとすれば、そのためには、まずお問い合わせフォーム自体のアクセスが増える必要があります。

 全体の訪問者1,000人 → お問い合わせフォーム10人 → 完了画面1人

といった状態になっているのが普通です。フォームを見た人の10%が完了画面にたどり着いているので、フォームには問題がありません。問題は、全体の訪問者1,000人のうち1%の10人しかお問い合わせフォームに到達していないことです。もし、もっと多くの人をお問い合わせフォームに誘導できれば、

 全体の訪問者1,000人 → お問い合わせフォーム20人 → 完了画面2人

と、訪問者を増やすことなく、目標数を2倍にすることができるでしょう。ウェブの効果を高めると言うと、すぐに検索や広告など「訪問者を増やす」施策を考える向きが多いですが、これはあまり良い順序ではありません。まずはお問い合わせフォームに到達する率を高める施策を考えましょう。

ホームページを作成する際、ページの右上に「お問い合わせ」という赤いボタンを置いておしまいにする制作会社が多いですが、それでは「訪問者がお問い合わせをしたいと思うようにする」力が足りません。

これは採用でも同じで、「エントリー」というボタンを置けばエントリーが発生するたけではありません。会社によっては「エントリーはリクナビから」といった外部リンクを置いているところもありますが、まずはこのリンクがどれくらいクリックされたか計測できるように設定し、どれくらいクリックされたかを把握しそれを増やす作業を行いましょう。

●見せたいファイルも計測しましょう

ページやファイル、という書き方をしているのは、ウェブは「ページ」だけではないからです。製品の詳しい説明をPDFファイルなどの形で掲載しているホームページは少なくありません。

Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールは設定によって、ウェブページだけでなくPDFファイルがどれくらい見られたかを計測することができますから、ぜひ設定して、見せたいファイルがどれくらい見られたかを確認するようにしましょう。

Googleアナリティクスでは、先ほどの「リクナビへのリンク」などの外部サイトへのリンクと、PDFファイルのクリック数は、計測設定方法が同じようなもので、「イベント」という方法を使います。イベントの設定方法はまた別の機会に解説しますが、ますはこれらが計測できるということだけ覚えておいてください。

●ページがどれくらい下まで読まれたか

ホームページはだいたい1画面におさまらず、ページをスクロールして下へ下へと見ていく仕組みになっています。興味のない人はページをスクロールせず、次のページに移動したり、帰ってしまうものです。逆に興味があれば、長いページでも下の方まで見てくれます。どのページがどこまで見られているかはとても大切なことです。

Googleアナリティクスでは、Googleタグマネージャーを使って設定すれば、このスクロール深度が測れます。

あるページが1,000回見られたことを、1,000ページビュー(PV)と言います。1,000回も見られて素晴らしいのですが、そのうち10%しかページを下まで読まれていないとしたら残念なことです。閲覧価値が低いと言わなければなりません。

 ページA 1,000ページビューで10%しか下まで見ていない
 ページB 500ページビューだけど100%の人が一番下まで読んでいた

となると、ページBの方が情報発信力が高いと言って良いでしょう。ウェブ担当者はサイトの情報発信力を高めていくのが仕事ですから、ページのスクロール深度を深めていくことも評価のポイントになります。

●ページの速さ

Googleアナリティクスでは、ページの表示速度も計測してくれます。何回かに1回だけのサンプル計測ですから、完全ではありませんが、目安を考えることはできるでしょう。

ページの表示速度は離脱率や直帰率と相関関係があります。待たされると人は帰ってしまうのです。今はネット環境が良くなっているので、サイトをつくっている側はあまりページの速度が遅いということを気にしなくなり、大きな画像を平気で掲載していますが、閲覧者はそうではありません。回線が速くなった分、待つことが余計に嫌いになっていると言っても良いでしょう。

今回はアクセス解析でどんなことが分かるのかについて駆け足ですがご説明してきました。次回はもっと、解析とサイト改善の具体的な方法について解説することにしましょう。