ホームページのアクセス解析は何のため?

ホームページの運営はただページをつくっていても、なかなか手ごたえのないものです。本当に見てくれているのか? お問い合わせしそうな人は増えているのか? ホームページを持っているだけでは分かりません。

問題は、その状態ではウェブ担当者が会社からまったく評価されないということです。「あいつは仕事してるのか」「ホームページを持っていて何か良いことはあるのか」なんて言われてしまいかねません。

数字を見ることがとても大切です。そのために「アクセス解析」と言われるチェック作業をするのです。「解析」なんて言うのでとても特殊で難しいことのように思われてしまうのですが、要は成果を上げるための準備の1つであり、ウェブ担当者が評価を受けて給料を上げるための不可欠な作業です。

今日は、ホームページのアクセス解析はどこまで分かるのか、考えていきましょう。

 

●解析すると何がうれしいの?

よく中小企業の社長さんに「解析が大切と言うが、解析をしたら儲かるのか?」と言われます。これは本当に(私が関西の人間だからかもしれませんが)、面と向かってよく言われます。

答は決まっています。「はい、儲かります。逆に、数字を見なければ儲かりません」。

ではどうやってアクセス解析で儲けるか、具体的なお話をしましょう。

ホームページで儲かるというのは、新規取引先からの問い合わせが入って、そこから契約に至る、というのが典型的な形です。多くのサイトで平均の問い合わせ率は0.1%ですから、1件のお問い合わせが入るには1000人の訪問が必要になります。

(大急ぎで付け加えますと、平均的な値が0.1%だというのは本当なのですが、御社がそれよりももっと高い値を出せる可能性はとても高いので、自社のホームページでも0.1%にしかならない、と思い込まないでください。多くのホームページはただ「お問い合わせ」というページをつくって、増やす努力を何もしていないので、1000人に1件しかお問い合わせが出ないということでしかありません。)

1件のお問い合わせ ÷ 1,000訪問 ×100 = 0.1%(お問い合わせ率)

お問い合わせは「お問い合わせフォーム」を送信することですが、そのためには、

お問い合わせフォーム → 確認画面 → 送信完了

と進むことになります。1件の送信完了がある場合の数字を見ると、

お問い合わせフォーム 10人 → 確認画面 2人 → 送信完了 1人

となっていることが多いです。これを率で見ると

お問い合わせフォームから確認画面に進む率 20%
確認画面から送信完了に進む率 50%
お問い合わせフォームから送信完了にたどり着く率 10%(=20%×50%)

となります。お問い合わせフォームにたどり着いた人は、10人に1人が完了まで進んでいるのです。これは大変良い割合です。でも、全体で言うと訪問者が1000人もあってやっと0.1%の1件だけお問い合わせがある。低い割合です。これは何が悪いかと言うと、

訪問数 1000人 → お問い合わせフォーム到達 10人 (1%)
お問い合わせフォーム到達 10人 → 送信完了 1人(10%)

で、お問い合わせフォームに到達する人が少ないのが悪いのだとはっきりします。御社のサイトでもこの「訪問数に対するお問い合わせフォームへの到達率」を計算してください。

もしお問い合わせフォームの完了率が同じ10%であるとすれば、お問い合わせフォームへの到達数を20人にすれば、送信完了は2人になるはずです。

訪問数 1000人 → お問い合わせフォーム到達 20人 (2%)
お問い合わせフォーム到達 20人 → 送信完了 2人(10%)

2件のお問い合わせ ÷ 1,000訪問 ×100 = 0.2%

お問い合わせ率が0.2%と倍増、もちろん、お問い合わせ実数も1から2へ、倍増しました。

数字を見て、問題がどこにあるかが分かれば的確な手を打つことができます。アクセス解析をすれば儲かる、というのはここのところを言います。

しかし、これだけでは大して儲かりませんね。続きも考えましょう。

 

●お問い合わせフォームの閲覧を伸ばすにはどの策が効いたか?

多くの人はお問い合わせが少ないと「フォームが悪いのではないか」「書くのが面倒なのではないか」とフォームを真っ先に疑いますが、これはたいていのサイトで濡れ衣です。フォームは悪くありません。フォームに誘うことができていない他のページが悪いのです。1000人訪問者があれば、うまく誘えば、20人をお問い合わせフォームに誘導することは難しくありません。1000人も来ているのですから。

つまりこの場合、「訪問数を増やさなくても、お問い合わせを増やすことができた」わけです。広告やSEOでコストを払って訪問数を増やすよりも、先にサイトの成績を高めることを考えるべきです。

もし、20件お問い合わせがあれば、うち1件を契約できるとしましょう。5%の成約率ということになります。営業部の成績としては普通の成績かもしれません。

もし月に1件のお問い合わせなら、成約に20ヶ月かかります。月に2件のお問い合わせになれば、10ヶ月で1件成約するでしょう。これだけでホームページのコスト効率は2倍に改善したことになります。

しかし、これでは足りません。毎月1件成約したいですね。初回契約の平均価格が100万円だとすれば、毎月100万円、年間1200万円をホームページから売り上げることになります。営業社員としてまだ1人前とは言えませんが、ホームページは営業者として少しは役に立ったということになりそうです。

毎月1件の成約が必要なら、毎月20件のお問い合わせが必要です。お問い合わせフォームの完了率が10%だとすればお問い合わせフォームに200人、完了率が5%に下がったとしたら400人がお問い合わせフォームに進むことが必要です。

まずは訪問者が1000人のままでお問い合わせフォームに100人進ませることができるかどうかやってみましょう。

・お問い合わせへのボタンが目に入りやすくする
・お問い合わせしたら魅力的な資料がもらえると伝える

これについていくつものサイト改善作業を思いつくことができます。ボタンを大きくする、ページの他の場所にもボタンを入れる、ページの下の方にお問い合わせでもらえる資料を魅力的に掲載するなどです。こうした作業をするだけで、お問い合わせフォームへの到達率は高まります。順番にやっていきましょう。

忘れてはいけないのは、1つ施策を行うたびにアクセス解析することです。どの施策によってお問い合わせフォームのアクセスが伸びたかを記録してください。それが記録できれば、それが御社の一番のホームページノウハウとなります。

さまざまな方法をやってみた結果、お問い合わせフォームの到達率が5%まで高められたとしましょう。1000人の訪問者で50人の到達です。50人の10%なら毎月5件のお問い合わせがあります。お問い合わせ率が5%に下がっても、2.5件のお問い合わせがあることになります。

さて、しかしこれではまだお問い合わせ件数が足りません。月20件問い合わせがほしいのです。

訪問数 1000人 → お問い合わせフォーム到達 50人

だとすれば、お問い合わせフォームへの到達を200人にするには4倍の

訪問数 4000人 → お問い合わせフォーム到達 200人

が必要だという計算になってしまいます。しかし、今1000人来ているというだけで十分多いのに、それを4倍にするなんてことができるでしょうか。

実際には4倍にする必要はありません。現在の集客では「お問い合わせしそうな人」が少ないというだけだからです。「お問い合わせしそうな人」をピンポイントで集客すれば、
訪問数 1200人 → お問い合わせフォーム到達 200人

ということが可能です。狙いを付けた集客を行えば、訪問数がたいして増えていないのに、お問い合わせフォームの到達が増えます。集客については検索を増やす、広告を出すなどさまざまな方法がありますが、これもコストの安い自然検索対策から行って、どの施策が効果的かをアクセス解析で評価し、効果の高い方法を強化するという順番で行えば、お問い合わせしやすい人だけに絞って集客することができます。

ホームページが成果を出す、ということについて世の中にいろいろなノウハウ本が出回っていますが、今言ったように、

・サイト内でお問い合わせに行きやすいように調整する
・サイト外からお問い合わせしそうな人を絞って集客する

という施策を順番にやっていくだけのことです。この作業を行えば、成果は着実に高まります。この作業を行わなければ、次のようになります。

・先にコストをかけて集客する
・サイトが調整されていないので、訪問者は増えたのにお問い合わせに到達しない
・その結果、コストをかけた割にはお問い合わせが増えない

必ずこうなります。あわててSEOをやりたい、広告を出したい、SNSも必要ではないか、と考えて、いろいろな専門家にコストを払うのは禁物です。まずはじっくり数字を見て、必要な数字を増やすのに必要な手を打つことです。

多くのサイトから「とにかく訪問数を増やさなければ始まらない」という形で相談を受けますが、その考え方は順番としては違いますから、お気を付けください。

次回はホームページのアクセス解析で何の数字が分かるのか、もう少し幅広く解説しましょう。