検索集客をもう「SEO」と読んではいけないこれだけの理由 2

■ キーワードを「1つ選ぶ」ことの不自然

検索対策という言葉が「SEO」と呼ばれるようになって以来、誤解が広がっています。今言われているようなSEOの考え方は、SEOサービス会社が売上を上げるためにあるのであって、その対象となる企業にとっては、はっきり言って「損」です。

SEOのやり方 = SEO会社のやり方

でしかないのではないかと考えています。

●検索対策の本質は「顧客の役に立つ情報」を出すこと

自然検索は、検索エンジンの検索欄にキーワードを入れることで行われます。企業が検索からの訪問者を集めるためには、検索者が見たいと思うページを作成することが一番重要です。

それは、検索者が見たいと思う情報がページになっていることが根本です。企業にとって誰でも良いから検索から来てくれたら良いのではなく、「顧客になりそうな人」に来てほしいわけです。

これをつなげてみると、

顧客になりそうな人が見たいと思う情報がサイトにあるかどうか

ということになります。検索対策の本質はここにあるのです。言ってしまえば、これがサイトにあれば、検索から訪れたのではない人であっても、顧客になる確率は高まります。実際、そうした有用な情報は外部からリンクをはられることも出ますから、意外に外部サイトからの集客も多くなったりします。

逆に言えば、今の企業サイトには「顧客になりそうな人が見たいと思う情報」が足りないということになりそうです。

検索対策を含め、顧客になる人を集めることができるサイトをつくる手順は次の通りです。

1)「顧客になりそうな人」はどんな人かを考える
2)「顧客になりそうな人」が何に困っているのかを考える
3)アピールしたい商品で、どの機能が「顧客になりそうな人」の困りごとに応えられるのかを見定める
4)「顧客になりそうな人」に向けて、困りごとを解決する方法を伝えるページをつくる
5)そのページから対象商品の対応機能にリンクをはる

どんなに検索順位を高めるのが上手なSEO業者が入っても、この手順が欠けていれば、企業は顧客を得ることができません。逆に、検索順位が十分上位でなくても、顧客の役に立つ情報があり、それが「この会社の商品によって課題解決になる」ということが伝わるようになっているサイトであればお問い合わせが入り、顧客を獲得できます。

ところが、SEO対策を行おうとする企業の多くが、この手順を踏んでいません。その結果、SEO対策を行った企業サイトに、顧客が求める情報はないまま、ということになってしまうのです。

●顧客になりそうな人とは誰か?

顧客になりそうな人とは、その会社の商品で解決できる課題を持った人です。

たとえば、浴室リフォームの会社であれば、浴室が狭い、冷えるなどさまざまな不満を持っている人でしょう。浴室を何とかしたいと思っている人は、この会社に出会えば課題を解決することができます。

課題と言ってもそんなに難しいものばかりではありません。「この週末、家族をどこかに連れていってあげたいなあ」というような軽い要望もあるでしょう。これは遊園地にとっては重要な「顧客になりそうな人」です。同じ要望を持った人は遊園地だけでなく、キャンプ場やカラオケなど多くの商売が獲り合いをするかもしれません。

ところが、遊園地のサイトを見ても、キャンプ場のサイトを見ても、「週末」「家族」というページはぜんぜんありません。遊園地の遊具やキャンプ場のスペックが並んでいるだけです。

だから多くの企業が「顧客になりそうな人」を集めることができず、サイトからの問い合わせが少ないのです。

一方、遊園地にとっては「週末、家族でどこに行こう」と思っている人が全部ではありません。「屋外で美味しいものを食べたい」「スリルを味わいたい」「子どもが楽しめるイベントはないか」「1日楽しめるデートスポットはないか」など、いくつも考えられるでしょう。

ディズニー映画がCMをつくるとき、3パターンのCMをつくると言われています。同じ作品でも、女性向けに「ロマンチックなラブロマンス」、子ども向けに「わくわくする冒険」、男性向けに「驚異のアクション」といった、訴求の方向性を違えたCMが併用されます。誰に向かって、何を言うか、ということを考えるのはアピールの基本ですね。

1つの商品であっても、複数の機能があります。それぞれの機能は必ず「顧客の役に立つ」ように企画されていますから、機能ごとに別の顧客を集めるべきものだと考えられます。

たとえば文具の会社で、1つのファイルがあった場合、

・豊富な色揃えで学校の科目ごとに使い分けられる(生徒と親)
・ポケットやインデックスで情報整理に対応(ビジネス人)
・リビングに置いていてもおしゃれなデザイン(家庭人)

など、多くの狙いがあります。何を狙っているかと言えば、それはさまざまな顧客の課題を解決することを狙っているのです。
また、

・豊富な色揃えで学校の科目ごとに使い分けられる
・豊富な色揃えで案件ごとに使い分けられる

と考えれば、同じ機能でも複数の顧客を集めたいということになります。

しかし、顧客の側は、最初から「色のたくさんあるファイルを探そう」と思っているわけではありません。「子どもが学校からもらってくるプリントや試験の答案がたまって、リビングが散らかって困る」と思っているだけかもしれません。この顧客と、このファイルが出会うためにはどんな情報が必要でしょうか?

この順番で考えれば誰でも考えらえることではないかと思います。

複数の商品を持った会社であれば、商品によっても集めたい顧客はまちまちです。全部の商品企画書におおざっぱに「女性向け」と書かれていたとしても、女性が「女性向け」と検索することはありませんから、どんな女性のどんな希望に応えるものか、ということを考える他ありません。それはさまざまなのです。

●「キーワードを1つ選ぶ」という不自然

ところが、「SEO対策」は「重要なキーワードを1つ指定してください」ということから始まります。

キーワードとは、顧客の要望の発露であって、要望と関係のないキーワードなどありません。

しかし、顧客が何を求めているかということと別のところで「どのキーワードが重要か」と考えて決めなければなりません。

浴室リフォーム会社にとって重要なキーワードは、「浴室リフォーム」かもしれません。ファイルを売る会社なら「ファイル」でしょう。遊園地は「遊園地」となりそうです。

つまり、重要なキーワードを1つ選ぶという段階で、顧客の要望と関係ないものになってしまうのです。これが「SEO」という考え方の、根本的にずれているところです。

なぜこんなことになってしまっているのか、と考えると、SEO会社が対策を行うことができるようにするためだということが分かります。順位向上対策の難易度によって、SEO会社はこのキーワードはいくら、と見積りをつくります。複数のキーワードなら複数の対策が必要になるので、これは無理もありません。

しかし、顧客企業が対象キーワードを決めるという時点で、サイトが成果を上げることとは無関係な作業になってしまうのです。

だから、私は「SEO」という誤解の多い言葉はもう終わらせなければならないと思っています。自社の商品は、誰のどんな課題を解決するものなのか、という原点に戻って、サイトのつくり方から変えなければ役に立つサイトになりません。顧客の要望と関係のない商品宣伝ばかり掲載していたのでは、顧客になる人ではない人ばかりがサイトを訪れてしまいます。

実際、多くのサイトでは自然検索訪問であっても単なる偶然であって、誰が訪れているのか分からないのです。その結果、私の手元のデータでは、多くのサイトの直帰率は平均55%と高くなっており、お問い合わせの目標到達率は0.1%と非常に低くなっています。0.1%ということは10,000人が訪れてやっと10件の問い合わせがくるのです。契約決定率が10%もあれば月に1件の成約があることになります。この状態ではウェブは、ビジネスの道具にはぜったいになれません。

顧客の要望に合致した情報とは何かを考えるという、ウェブのいろはの「い」に立ち返って考えていくべきで、SEO業者の商売に沿ったものとしての検索対策をやめようではありませんか。

> サイトの分析に基づいて改善策をアドバイスします。